"Logue"Nation

ローグネーション。言葉と図像を手がかりにまんがを「私」が「読む」自由研究サイト。自費持ち出しで非営利。引用画像の無断転載を禁じます。

『こち亀』野郎!―『こち亀』追跡200キロ:31~35巻

31巻

両さん
チンコの天才の片鱗が見える([全日本パチプロ大会!])。
 パチンコの才能は、数ある両さんの才能のなかでもちょっと特異なところに位置しているように思われる。この回にしてもそうだけれど、自分でこの才能を誇示したり、この才能をもとに調子に乗って悪事をたくらんだりは、しないのである。
 この回ではまず主婦の代わりに打ち、リベートを貰うところから始めて、ついには車を獲るに至るまで玉を増やしていくわけだが、そのこと自体に別に熱狂したりせず、パチンコという行為じたいはとても淡々とストイックに行っているのがわかる(大会に出て浮かれているのも、あくまでテレビに出ているからであろう)。
 そのことが逆になにかおそろしい。これは何なのだろうか。パチンコはギャンブルではあってもあまりにシンプルだからか。それとも両さんにとってはパチンコは神聖にして侵すべからざるものなのか。

は天下の……]では、岡本元三郎氏の遺産200億を受け継いだ両さんが金を使いまくるけれども、これも200億という数字に実感が湧かないこともあるだろうが、蕩尽じたいに熱狂するというより、故岡本画伯の遺言を果たす心意気に応えたという意味あいの方が、どうも強い(p108)。
 この二つの回は、単なる金の亡者とばかりはいえない両さんの位相を表していよう。

さんの新卒編が[思い出写真]。20巻の子ども時代編からずいぶん間が空いており、このあとに比べると、両さんの思い出話の頻度はそれほどではなかったことがわかる。
■中川・麗子
れ合いなしの中川・麗子の驚きのおもしろさは、このあたりでもまだまだ健在。

「先輩でも新人のころあったのか?」「あたり前じゃない ボウフラみたいに突然わいてきたとでも思っていたの?」([思い出写真]p159-3)

二人の表情の真摯さを見よ!
■麗子
さんへの憧れはすでに物語のなかに描かれていた(25巻「■麗子」の項、参照)。[夏便り…]も、両さんと麗子の微妙な関係をささやかに語る一編。

「中川と話しあったんだ… わしたちのせいで婚期をのがしたら…悪いからその…」
「そう…… ありがとう
いきそびれたら両ちゃんのところにでもいこうかしら」「変なこというな ばかっ!」
(p125-1)

麗子の表情に関しては、個人的にはこの二ページが全編のなかではベスト。ちょっと少女まんが顔が入ってはいるけれども。
 やっぱりこの二人にはこのくらいの距離がちょうどいい。

 登場時からこのあたりの時期までの麗子をめぐっては、麗子が年齢的に成長するキャラクターであったこととも関連しようが、婚期について触れられる場面が多い。
■御所河原組長
度目の登場([バイク時代!])。初めて姓名が明らかになる。
 「御所河原組長集」05・06を参照のこと。明らかに小学校のようなヤクザの事務所がキュート。
■部長
力行使の一例。
「そのかわりおまえのほしがっていた500円玉をやる いいな!」「やだよ今さらそんな物ゴミ同様」
「いうことをきかんか! いう通りにしろ!」(グイ)「ふ…ふあい(汗)」
([金は天下の…]p115-6)

箴言
「これはガソリンじゃありませんよ 太陽電池システムで動いてるんです」「地中じゃ太陽なんかないぞ!」
「それがこのシェルターの欠点なんですがね」「何考えてるんだこの男…」
 (p38)
 この回では、球形のシェルターがボーリング場に激突(p32-1)のあと、ストライクのランプが光るコマ(p32-2)の間(ま)が見所。

「23万8326個……
どれでも好きなの持っていってください」「決めたこの車」
(p73)

「すごい! 車の流れをピタリと止めたぞ」「まるでモーゼのようだ」 (p88)
 どうでもいい生マジメなセリフがなぜか笑える。

「ちゃんと16点式安全ベルトをしめなさい」 (p91)

「とどめに!!
ママレモンをくらえ!」「ぎゃあ──っ」
 (p144)



32巻

両さん
ナキスト両さん

「金をよくみろ 日本銀行券とかいてあるだろ すなわちこれは馬券と入場券となんらかわりない
ある日突然無効となったらただの紙だ だからこそ使えるうちに思いきり使うのだ! わかるか!」
「根本的に考え方が屈折してるようね」「アナーキーだからな先輩は…」
 ([コピー社会]p66-3)

 実際のところ、両さんの言っていることはたぶん本当で、国や地域によっては「ある日突然無効になる」なんて日常のところもある。使用する社会においてそれが物品と一定の比率で交換可能であるという合意・了解があって初めて貨幣は貨幣たりうるのであって、合意・了解がなければ、「藝コマのスカシ入り・妙に丈夫な紙切れ」に過ぎないのであった。
 でも日本のアナーキストって、日本銀行券を馬券や入場券と一緒くたにしてしまうハイセンスはなかったと思う。あくまでイメージでだけど。

 ちなみに、貨幣と社会との関係を的確に評した文章が、

「貴様、目の前をすべっていくキノコを喰ったら巨大化して火を吹いたというヨタ話を真にうけて、キノコを追ったまま谷底に消えていった事があるか?」(『神聖モテモテ王国』6、小学館、1999)

なのであるが、余談であった。

てる両さん
 令嬢との一日だけの交流([もてる条件])。一日だけだが、高級じゃなくてもあったかく楽しい交流のなかで、両さんの飾らないよさ・価値が確認される。

 令嬢に麗子の代行としての意味もある一話だろう。
 ただ、麗子では物語上表現できないのは、両さんも令嬢も、夕方になったらさよならを言うことを、レストランを出た瞬間から、言わずともそれぞれわかっているというかっこよさでありましょう。
■部長
 「物のはずみとはいえ…両津と同じ行動してたとはなさけない…」(p100)と言うとおり、両さんと大人げなく張り合う部長([熱戦!!学園祭])。
 ざらめ糖に火薬を入れて、なおかつ後ろ姿を見せて完全にすっとぼけている(p99-2)のは、クレープにニセのゴキブリを入れる以上の卑劣っぷりである。
 「日本の少年まんがで後ろ姿が最も素晴らしいキャラクター第一位」は大原部長だと思うのですがいかが。
■御所河原組長
度目の登場([仲良し旅行])。
 「御所河原組長集」07~08を参照のこと。

●その他ノート:
聞オチの最初か。[悪魔がやってきた!]。
 前述したが(16巻「■両さん」の項)、この回も、そもそも両さんは基本的には悪くない話のパターン。


箴言
「ちがいますよ S.ONY 私の兄 進お兄さんが作った製品ですよ その名もウークマン
困るんですよね そのように大手会社とまちがわれては…」「ややこしくしてるのはそっちだろうが!!」
「するとこのラジカセはSANYOじゃなくてS.ANYOですか?」「さよう! 私のイトコの安世左々子さんが作った品です」
「このテレビもH.TACHさんが作ったのか」「いえそれはHI・TACHというメーカー名です」
 (p72)
 誰だよ安世左々子って。

「鳥だ! ロケットだ! いや!! バッテリーをとりかえてもとりかえてもすぐあがる コスモスポーツL10Bです!」(p176)
 ♪強きを助け弱きをくじく。


33巻

■作者
イデアがないことをネタにするのが[漫画家残酷物語]。作者がキャラとして登場する初めての回。
 ゴルゴ31はよく10年以上も続いてるなあ おそろしくなるよ…/作者自身ゴルゴ31のように機械化してるのかもしれんなァ」と言っているが(p6-2)、今となっては(いや、たぶん当時においても)、この作者は言われる側に回っている。
 作者が登場してネタが尽きたのをひたすらいうのは鳥山明Dr.スランプ』あたりのお得意。
両さん
 画家残酷物語]で、好き勝手なまんがを描く両さん
 このまんがで描かれる両さん<感心な自分>像は、その微妙な歪みっぷりといけしゃあしゃあっぷりゆえに、特筆に値しよう。

日課として仏像を彫る

「先輩の日ごろの行動に心を打たれた総監が今日から署長になってくれといっています」「なんと! やはり人間努力だな」

この<感心な自分>像が、小学生レベルであるところが最高である。
 このセンスは例えば、[旅立ちの日](39巻p134-2)で、本田に「ローマ字を習うとかかきとりをするとか」と諭すセリフなどにも存分に表れています。

 科980犯のスリのじいさんの面倒を部長に押しつけられる[お達者で!]では、署長は部長に、「大原くん 両津が見張りで大丈夫かね? ふたりで悪い事するんじゃないか?」(p28-5)といって心配しているが、部長の「毒をもって毒を制す 大丈夫ですよ署長」という答えのとおり、両さんはじいさんがスってしまった商品を律儀に買い直しにいったりする。妙なところできっちり守ることは守るのである。

 ーニングポイント]~[世の中大変だ!]は、ひさびさの、両さんが派出所を飛び出す回。本当のホンキで飛び出してしまうのがめずらしく、この巻は個人的には、わりと読み返す頻度の巻です。
 最初に飛び出したあと、ボーナスの支給日が明日ということに気がついて派出所の前をウロウロする両さんは、『男はつらいよ』そのまま。

 菓子屋とおもちゃネタも見える([温故知新!?])。
 GIジョーなどについても詳しく触れられる。
 この回はアンティークおもちゃ(とその店)を俎上に載せる回の初発で、両さん自身はここでは「市場」価値をわからない、というのが落としどころになっている。こういう、両さんとおもちゃなどとの関係の変化については、30巻「■両さん」の項を参照のこと。
■部長
 長の両さん理解については何度か触れてきたが、

「とにかく両津には気をつけろよ サル以上の頭脳とネコの身軽さをもってるからな」([ポリス忍者!]p61-5)

という中川を諭す言葉にも表れている(このオチのコマ、麗子は両さんに気づいているんですね。読み返して今気づきました)。なにげに両さんの頭脳を褒めてるようで褒めてるんだかなんだかわからなかったりするが。

 ころがそういう部長も、[ターニングポイント]では、「おまえたちはまだ両津を理解していない あいつは金のためならプライドもかなぐりすてる そんな男だ」(p70-6)と中川と麗子に言い、その予測どおり両さんは帰ってくるけれども、プラモづくりを頭ごなしに否定する余計な一言で、両さんがホンキで飛び出してしまったのは誤算だった。

●その他ノート:
 っと気になっていたことなのだけれども、ある時期のまんが作品には、「私」の漢字に、律儀に「わたくし」とフリガナを振ってある。
 『こち亀』で言えば、見たかぎりでは[漫画家残酷物語]、p9-1の両さんのセリフ、「これが私(わたくし)の仕事だからな」が最初ではないか。
 多くのまんが作品や雑誌を調査したわけではないのだが、
(1) ある時期までは難しい漢字以外にはフリガナを取り立てて振る必要はなかった。
(2) なんらかの苦情が多くなって(または自主規制的に)主な漢字にはフリガナを振るようになった。ところが杓子定規に常用漢字にしばられ、「私」をわたくしとは呼ばない実態であったのに関わらずフリガナとしては生真面目に「わたくし」と振っていた。
(3) だんだん常用漢字的規範が社会的に緩やかになってきて、実態にあわせて「わたし」と振るようになった。
という流れがあるのではないか。小学館系なんかは原則的に全ての漢字にずいぶん前からフリガナを振っていたが、やはり「わたくし」→「わたし」になった瞬間があるんだろうか。
 この問題は、まんがの(自主的な)社会への意識をさぐるのにも、いわゆる常用漢字的規範の緩和を考えるうえにも、けっこうおもしろい素材であるとずいぶん前から思っています。

 それはそれとして、この回は、同時期の売れ筋のまんががちゃかされていて好もしい。
「汗と涙の高校球児 清く正しく美しく聖人だけが集まったけがれをしらぬ青春のショー番組が終わりをつげました!」(p22-1)

箴言
「でえええいっ カムバックマイタコくん」(p55)
「忍法強引説得の術」(p50)
「忍法浮気心の術」(p51)
 忍術のインチキっぷりは、貸本マンガや映画を初めとした「忍術もの」へのパロディ的なオマージュだろう。
 『忍者武芸帳影丸伝』(p52)はたいへんにおもしろいまんがです。

「今日からうちの工場に新しくはいった両津さんだ
以前は大蔵省に勤められていたがわけあってやめたそうだ みんなよろしくな」「どうも 天下りでやってきた両津です」「変わった天下りをする人だな」
(p77)
 周りも少しは疑うべきである。

「うちは学生しかやとわないよ あんた学生!」「はい 東京大学図画工作部の8年生です」
「そんな学部あるのか?」「はい 紙飛行機の運動力学がクレヨンにおけるケロヨンとブイヨンの関係について調べたり……」
(p85)
 こっちは少しは疑ったみたい。

 この二つのやりとりは、『派出所』のなかでも十指に入る突き抜けた言語センスっぷりだと私などは思う。



34巻

両さん
段もわからなかった前巻から一巻分も置かず、ここでは早くも「おもちゃに関しては私はプロだ おもちゃ研究家としてその名は高い!」と、「おもちゃ研究家」を自称している([おもちゃ行進曲2]p8-5)。数話あと、[植木警視正の退職]では、「おもちゃ評論家」(p162)。
 このおもちゃ研究家は、部長が後ろにいるのに、児童用トランプが無税で一般用が有税であることを熱弁する姿が好もしい([お体大切に…!])。

の巻で特筆すべきは、部長の後をうけて、両さんが禁煙することであろう([煙はEなもの!?])。
 作者の発言、「それでもすいたいという人はカッコつけてふかさないでぜひ肺の中にのんでもらいたいゴクリと! そしてタバコを根元まですってもらいたい これで10年は命が縮む」(p50-4)にうむうむと頷いたものです。
■部長
さんより一話早く、[お体大切に…!]にて禁煙。ちなみにこの話、あいかわらず部長のツッコミがすごい。

「つい幼き日の郷愁と酢イカの香りに誘われ足が…」「今でも幼いだろうが こい!」(p28-3)

[煙はEなもの!?]では両さんの50キロで熱海まで走るという口約束を守らせたり。彼は本気だ。
■部長と署長
 底的に両さんを指導しようとしながら、両さんが手柄を立てるとコロッと態度をかえる。このタグイの上司は『こち亀』にかぎらずよく描かれはするところであるが、両さんの、圧倒的に不信感たっぷりの目つきが見どころ(p79)。
星逃田と雪之城
 ョイ役で[フジヤマ・キャノンボール]に登場。それでもしっかりオチをもっていくのは、おいしいキャラたちである。
 二階建てバスってのもおちょくっていてよい。雪之城は管見のかぎりではここが最後の登場。

●その他ノート:
 はEなもの!?]という題名のセンスって、──題名をつけるのが誰なのかは知らないし特定しようという気もないけど──何なのだろう。今の子が「縁は異なもの」ってフレーズを使うだろうか。こういう妙にインテリ度の高いサブタイトルは初期に非常に多い。

 ちなみにこの回、たばこ屋のばあさんが両さんの指名手配書を見るコマがあるが、この指名手配書の写真が目の前の両さんの表情とまったくいっしょなのが笑える(p51-5。写真が汗までかいてる)。このへんの呼吸の絶妙さは、やっぱり30巻台が頂点。
 同様のものとしては、中川が「昨日は東京のあちこちで不思議な現象がおきたらしいですね部長!」といいながら読んでいる新聞の見出しが、「作日は東京のあちこちで不思議な現象がおきたらしいですよ!」(33巻[時間よ止まれ!?]p118-5。原文ママ)だったり。

 バイ隊員・舞昆クン!!]、当時は家庭用コンピュータは、パソコンとはいわずマイコンと言ったことに注釈が必要な時代になってしまった。
箴言
「あっしは心入れかえ務所からでたら真人間になります」「昔も同じセリフをきいたが…そうかえらいぞ!
みろ昼間だというのに太陽も夕日になってしまった」
 (p78)
 「昔も同じセリフをきいたが」の距離感がいい。

「全員でプラモ屋いって店の人がみてぬ間に…その場で組み立ててしまうんです」
「どこが不良なんだよ」
「プラカラーで色までぬってしまうんですよ 完成品にしてしまうというおそろしさ」
(p126)

「ちなみに作者が中学生のころ新聞配達していてデン助の家と宇都宮雅代の家に夕刊を配っていたという伝説がある」「それも美談だ」(p172)



35巻

両さん
 柄の変化について。
 例えば[遊び大好き!]p8の4コマめや6コマめのように、両さんのくずし顔が描かれる際、【ほおの斜線】が、20巻台後半から顕著に見えはじめる(p9-6の目のクマを表す斜線はまた少し違うのだが)。
 また、同じくこの二コマには、目をふちどる下の線が、上向きの曲線になっているのが確認できる。この傾向もやはり20巻台後半からの現象であるかと思われる。にやけ顔を表現するために上向きの曲線で目が描かれることは最初期から見えるのだが、にやけ顔を表す以外で用いられるのは、20巻台後半からである(20巻台前半まではギリギリのところで上向きになるのをこらえている)。絵柄の面でも、20巻台後半は画期であった。

 ったいに、30巻台前半から遊びネタが堰を切ったように頻出しはじめていた。[遊び大好き!]では、「ずるい」「ひきょう」は敗者のたわごと! 遊びでも勝たねばならん! これが両津式遊び学だ!」という信念がいっそすがすがしい。

■本田
 さんの「なん度ふられてもこりないやつだなあ… いまに寅さんシリーズになっちまうぞ」([ジキルとハイド]p32-1)という言葉が全てを物語っている。
■部長
 長の両さん管理シリーズ第二弾、[マネーゲーム!?]。ほしいものを申告すればその分、金を出すという部長に、聖書代と阿弥陀如来代を請求する両さん両さんだが、部長のシビアさはその上を行く。

「部長これじゃ聖書も買えませんよ」「古本屋でさがせば買える!」
阿弥陀如来だって金ぱくのすばらしい物は20万くらい…」「おまえの得意なプラモで買えば安い!」
阿弥陀如来のプラモなんてタミヤからでてませんよ部長」
(p107-4)

 いったいにこの回の各キャラクターの表情は、逐一取り上げたいぐらい、最高に見応えがある。部長でいえば、上のやりとりのあと、本当に両さん「ちょっと仏像買ってきます」(p108-9)と行って出ていったあとの心底驚いている顔が一押し(p109-1)。
■御所河原組長
 度目の登場([青春のワーゲン])。「御所河原組長集」09~10を参照のこと。

●その他ノート:
 っていいとも!」を見る両さん([遊び大好き!]p7-6)。友達の友達はみな友達だ。世界に広げよう、友達の輪。
 ちゃんと電話が書き込まれているところが心憎い。そういえば、ゲストがプッシュホンでかけていたころ、ダイヤルを観客席から見えなくさせるための黒いプラスティックの覆うやつ、子機になった今でも、ゲストが自分でかけるケースのときにはたまに出るようで、妙に懐かしかったりする。

 スペシャルで発見されたといういわくつきの県、度井仲県。
「どこにあるんですか…その度井仲県ってのは?」「千葉と埼玉の間にある県だ 今年発見され今年から県として認可された新しい県だ」「秘境みたいなところですな…」([東京留学!?]p63-2)
 『こち亀』の空間感覚については17巻「◎」の項で前述。
 出来杉くんによれば、もはや地球上に秘境の新発見のみこみはないという。唯一、「ヘビー・スモーカーズ・フォレスト」を除いては。……というわけで、たぶん度井仲県もこれまでは「いつも雲がかかっていて衛星写真がとれな」かった(『のび太の大魔境』)のだと思われる。


箴言
「《ケンカの状況はどうですか?》」「《みた感じ40歳くらいの中年がふたりなぐりあってますねえ これはひどい
やめなさいきみたちこらっ 警官のいうことがきけんのかっ こいつ!
おっとチーです!ふたりとも血を流してたたかっております これはすごい手になりそうな気がしますね
ポンです ポンポンたたいてます ないてますねえじつに!
おっと!つもったもようです 無事終了しました!これで現場中継を終わりますNHK》」
(p47)

「いや! 中川くんのアダ名をハンサムくんにしようかと ははは」(p108)

「あくまで両津ではないというんだな」「もちろん! 両津さんは有給休暇でハワイへいってます」(p137)
一発でばれるウソの言語センスが冴え渡る30巻台。

「わかったよもう一万円足してやる」「よろしい」
ジェットエンジンをおまけにつけよう」「極端にかわるやつだな」
(p168)

「そこでぼくがもらいましょうといってもらってしまう! これぞ“あげる”“いらん”“もらう”の三段活用!」(p185)




(2001/11/10。2021/09/20再録、一部削除。)