あるいは、おキヌ聖女編。アシュタロス一派との対立と横島成長譚に一息いれ、二、三話1エピソードのギャグまんが展開の数編である。
■「魔法の鉄人!!」
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「私の~~気が確かなら~~」「「記憶」よ冥子~~!」
これほどこのセリフの似合うキャラはいない。
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「大丈夫だってば!! まーかせて!」
いうまでもなく、ゆうきまさみ『究極超人あ~る』(小学館)の鳥坂センパイの名ゼリフが元ネタ。
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「あああっおいしゅうございますっ!!」
『料理の鉄人』における料理記者岸朝子氏の決まり文句。
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「最初から美神さんはこのための料理を…!?」
相手の出方を予想してその欠点を衝いた料理を出す、──この芸当ができるのは日本では他に海原雄山先生ぐらいであろう。
■「遊びの時間は終わらない!!」
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「俺はもー大人で忙しいのっ!! オモチャで遊んでちゃ生活できねーんだっ!!」
この二話、「Dr.椎名の教育的指導!!」、「ミニ四駆の鬼」(1巻p172)の長編化として読むことが可能。
■「サバイバル合コン!!」
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「あれ… でもなんか忘れてる気が…?」「(今日はクリスマスだ…! 博愛と寛容がクリスマス精神!!/怒っちゃダメだ…!! しかし……)」
このエピソード、よくできていると改めて思う。良質のコメディになってます。合コンで余った雪之丞とタイガーの怨念も、その二人にハメられるピートも(「えっ!?「雪が食べたい」!?」)、12時で売れ残りという批評も、そしてピートのオチも。
ところで、このエピソード、実は美神が一コマも登場しないことは注意される。
もともと学校ネタが何回か積み重ねられ、それと同時に横島がGSとして力をつけはじめてきている状況にあっては、横島を中心に同学年キャラが配置されて物語が動くようになっているのであって、美神がいなくても横島のおもしろさでハナシが保つのである。
これは『極楽』の新しいエピソードづくりの可能性が出てきたということでもある。『極楽』の世界観の層がかなり厚くなってきている観があります。
■「わが青春の宝船!!」
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「どーせ…!どーせわしらはマイナーじゃ…!ビートルズで言えばリンゴ・スター。」「ドリフで言えば高木ブー。」
むかし『ジャンプ放送局』のネタで、「47都道府県を全て言って見てください。46コしか思い浮かばなかったら残りの一つは佐賀県でしょう。」という佐賀県民の投稿があったな。
■「Gの恐怖!!」
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「い…痛くもかゆくもないわ…!?/なんか、一刻を争うって感じ…?」
かなりの勢いで、美神がいい感じの「ヨゴレ」になってきてます。全部調べようとは思わないけど、ヨゴレ女性キャラの特権的記号、【ガニマタこけ(片足)】も、全巻の後半では、容赦なく美神に使われるようになるように思う。このことは、美神の描かれ方・位置づけの変化というところではちょっとした注意点。
■「遊びの時間、ふたたび!!」
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「いきなりコレかいっ!?」
「ハタつつみ」も「モズおとし」もそうだが(p51)、わざわざ言うのも恥ずかしいが、このコマの構図からしてすでに藤子不二雄A『プロゴルファー猿』を承ける。
参考、「わしの正体はミスターF。」「わしはいつもバカを連れてくる係です。じゃが今日はアメリカ大陸からブタッキーに引きあわせたいビッグスターを引き連れてきた。」(ながいけん『神聖モテモテ王国』6巻、小学館、1999(1999))
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「さーて、それじゃ──」
目もとに黒く必要以上に陰をつけているのも、『猿』が元ネタ。
■「バレンタインデーの惨劇!!」
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「バレンタインデーっていうのは、もともとキリスト教以前の古代ローマのお祭りなのよ。」
『極楽』では、[チョコ人間第一号!!](8巻)、[Vの悲劇!!](13巻)に続くバレンタインデーネタ(メインではないが[清く貧しく美しく!!](17巻)も)。
バレンタインデーネタは、クリスマスネタに並んで、少年まんが、とりわけ学校まんがの定番。それだけに、とくにループの時間を描く作品は、毎年手を変え品を変える必要にせまられている。
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「残念だったわね─!!それは私にしか作れないのよっ!!」
これもなかなかこおばしいキャラになってきた。彼女が気の利いたことをしようとすると、おおよそ何かアクシデントがある。
「あのー…/どちらの星のかたでしょう?」(p93)という小ボケもなかなかいい。
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「とにかくここから上がりましょう…!?」 きゅっ 「え…!?」
横島の手を「きゅっ」とつかむおキヌ。
この一コマは、過剰な書き込みがないからこそ、その行為が美しく読める。横島にとっておキヌとは何か、を決定的に示してもいよう。ここでのおキヌは、ドブ川のなかに足を浸すことを厭わず、横島に手をさしのべている。忌み(=汚物)のなかにあえて身を投じ救済を果たす。
「サバイバルの館!!」23巻p143-1も参照のこと。
それにしてもはんてんで街中を走らせたのは、ツボを心得ているとしかいいようがない。柊あおい『星の瞳のシルエット』でもありました。
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しゅこ~ ぱ~ しゅこ~
ここから最後まで、横島と西条の顔は徹底して描かれていない。一見さりげないが、こういうところを徹底させることが作家のセンス。最後のコマなんかで表情が見えてもおもしろくないはずです。【血管(怒り)】も【汗】もほんとはいらないと思う。
(2000/03/23,24。03/08/17新訂。20/11/21再録、語句修正。引用は椎名高志『GS美神 極楽大作戦』(小学館<少年サンデーコミックス>、1992-99)、文中で同作の画像の引用をする場合はkindle版による。)